虚勢の銀貨

東村の日々の記録

機械が人間様に勝てるわけがないだろ!いい加減にしろ!

 前回から大分日が空いてしまいました。すみません。

 

 最近職場や担当顧客のみならず、テレビや電車の中吊り広告でも「AIだIoTだ」と騒がれているのを目にします。私は曲がりなりにもIT企業社員ですから、コンプライアンスに引っかからない程度にそのことについて書いていきます。

 

 まず、「IoT」これはInternet of Thingsの頭文字をとったものです。端的に言えば、「これまでネットに繋がらなかったものをネットに繋げて、より多くの情報を集めよう」とする考え方や手法です。特に使われるのが工場系ですね。

 工場では大型の機械が様々な製品を作っていますが、これまではIoTと言うほどのセンサーや監視がされていませんでした。私は工場に勤務したことがないのでステレオタイプな意見になってしまいますが、自動で集められる情報と言えば自動車のメーターに表示される程度のものが精いっぱいだったと思います。「何をいくつ生産して、それをどこへ貯蔵する」というコマンドを最初に入力すれば、あとは自動運転です。

 これがIoTになるとより細かく情報を集められます。材料の在庫や生産品の質はさることながら、製造する側の機械の調子まで。これが今までは情報量が多すぎてできなかったため、逐一人の手が介在していたわけです。このIoT、多分皆さん想像つくとは思いますが、目指す先は完全無人の工場経営です。人がいるとむしろ邪魔、となるような完成形を夢見ているわけです。『蟹工船』や『女工哀史』の頃とは比較にならないほど安全に効率的になりましたが、物を作るために大型の機械を動かす現場はどうしても危険が伴います。安全を優先すると効率が下がる、でも今の経済至上主義の社会は生産性が下がることは許さない。そんな経営層をために生まれた概念がIoTです。

 

 さあ、今話題のAIですが、これは明らかに単語そのものが独り歩きしています。IT系と明示している人のツイッターでもたまに言われていることですが、世間一般としてAIは過大評価されがちなんです。

 まず皆さんがAIと聞いた時に思い浮かべるのはなんでしょうか。きっと『ターミネーター』や『ドラえもん』のようなものではないかと思います。世間の評価はこれとほとんど一致します。ドラえもんほど万能でなくとも、手軽に人間をアシストしてくれるめっちゃ性能の高いシステムか何か、そんなところでしょう。断言しますが、今の技術ではそんなものは無理です。

 

 では今のAIは何ができるのか。非常に端的に言ってしまえばexcelのマクロの強力版と、データの分析でしかありません。自然言語解析や画像認識、情報の収集は確かに可能ではありますがそれは分析の上に成り立っているものです。

 AIにデータを入力し(技術者は「データを食わせる」なんて言いますけど)、その中の相関関係を見つけ出していきます。何故AIにそれをさせるかというと、人間とAIが扱えるデータ量の差がとんでもないからです。

 例えば、「中学生の苦手科目をリストアップ」とテーマ付をして、一人の人間ができる分析はせいぜい中学校一校分でしょう。ただそれだと「A中学校の生徒はここが苦手」という結論しか出せませんから、普遍性や妥当性は求められません。対してAIですと、採点後のまとめる前のものでだとしても、データさえ集まれば日本全国の中学校を対象に分析できますし、ことによっちゃ苦手科目の苦手分野まで引き出してくれます。

 ですから、AIを導入したからといって業務が劇的に改善すると考えるのはあまりに短絡的なんです。適材適所なのは人間以上ですし、まずAIに食わせるデータの必要数が膨大ですから、ちょっとやそっとで試せるものじゃあないんです。

 

 加えて、想像に難くないとは思いますが、とてつもなく高価です。まあまずフルパッケージを個人で購入、活用できるレベルではありません。今はネット上にAIシステムのソースコードが無料で公開されているようですが、システム構築が趣味の人や研究職でそうした分野に就いている人ならいざ知らず、私達小市民が困ったことを解決するために実用できるレベルではないんです。

 確かに画像認識や物体検出は今流行のAI分野として目覚ましい発展を見せてはいますが、普通に生活していて「今ここで画像検出できたらいいな」なんて考えますか? 某銀行のチャットボット(無人の質疑応答システム)には某国際的SIerのAIが使われていますし、実際それで結構な効果も上げているようです。ただそれも、それまでの膨大な量のデータと膨大な構築期間があってのことです。個人レベルでそれだけの情報(一つの領域に対して有用的だと判断されるもの)を集めることはほとんど不可能ですし、まさか家にあるものの位置を全てマッピングして、それを全てAIに食わせることをしようと考える人はいないでしょう。

 

 まあ、何はともあれ、現時点でAIというのは極限られた領域でしか活躍できないツールです。勿論、今後の発展や参入できる分野は数知れませんがそれもまだまだです。

 巷では「AIに仕事を奪われる」なんて声高に叫ばれていますが、こと日本に限ってはまだまだ先のことでしょう。今朝のニュースで、経団連会長の部屋に初めてPCが導入され、メールができたらしいですね。これまで20年間、PCを使わず全て紙媒体で仕事をしてきたらしいです。日本の労働市場を牛耳っているのはこんなバカ達です。こんなアホ達の政策を有り難がって受け入れてる経営者も、「世間の流れだから」と無言の賛同をしている管理職も、現代の(日本の)世相を上手く反映していますね。

 大学生の一人一人がPCを持つこと(少なくとも一家庭にPC一台あり、USBメモリの使い方を知っていること)が当たり前になった現代に、未だに「履歴書は手書きの方が気持ちが伝わる」なんて世迷い事を口走ってる連中です。きっとAIが普及して可能な限りそれが労働を代替することがワールドスタンダードになったとしても、日本では「人と人が顔を合わせたほうが気持ちは伝わる」「人に出すものを人が作らないのは失礼にあたる」とかいって、結局取り残されていくんですよ。ほぼ間違いないです。

 世界に目を向けられる企業はAIを賢く利用しますけど、根性論大好き、非効率大好きな経営層は淘汰されつつも残って、且つAIで賄うには費用対効果が乏しい単純作業は変わらずに続いて、きっと日本の寿命はあと20年ってところでしょう。

 

 大丈夫ですよ。IoTもAIも皆さんの生活に直結するほどの影響力は、目下のところ持ちませんから。持ったとしても日本ではそれを発揮できませんから。

 

 はあ、こんな国、滅べばいいのに。

 

 ゲヘナより哀を込めて。